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<シンポジストの発表・要約>
Iさん・・・・都立大塚病院
HIV感染妊婦の年次別変動で1997年まで増加していたが、それ以降30〜40人位で横ばいであったが、昨年は47人と増えこの3年間でみると、77%の増加となる。妊婦とパートナーの国籍別年次別推移からみると、日本人同志のカップルが増えている。HIV感染妊娠が日本人独自の問題として定着しつつある。妊娠がHIV感染者に対して及ぼす影響は、妊娠による免疫力が低下するため病状の悪化やエイズ発症の早期化が心配で精神的ストレスが大きい。妊娠初期の検査で初めてHIV感染がわかった方が多いので、自分が感染している不安に加えて、この子を生むかどうかの決断や母子感染への不安といったストレスがかかる。感染予防しないと赤ちゃんへの感染は30%といわれ、2005年ユニセフ世界子ども白書によると、世界でエイズ孤児は1520万人と推定、HIVと共に生きる0〜14才の子どもの数は230万人といわれている。 お母さんから赤ちゃんへの感染経路について、胎盤を通して感染する割合は少なく、主に産道感染が多い。母乳にHIVウィルスが少量だが入っているため母乳をあげると感染する。妊娠初期のHIVスクリーニング検査が一番大事で、昨年の日本の妊婦スクリーニング検査率は95.3%である。HIVに感染していると気づかず出産すると、子どもの方でHIV感染がわかるケースがある。HIVに感染していることが分かれば、抗ウィルス剤を飲んでもらいレトルビルという薬を中心に多剤併用を行っている。分娩方法は妊娠37週で陣痛がくる前に帝王切開する。
なぜ妊婦の検査が必要なのか。感染に気づかないでいると、赤ちゃんの感染率は約30%でお母さんの治療が遅れる。妊娠初期に分かると赤ちゃんの感染率は1〜2%と低くお母さんが適切な治療が受けられる。HIVに感染した赤ちゃんが何も治療をしないと約半数が1年以内にエイズを発症し、その後治療をしても約半数が死亡している。分娩方法による母子感染発症率は帝王切開で感染する赤ちゃんが1.3%に対して、普通分娩は感染する確率が25%である。日本人のHIV感染児41例のうち1/4が亡くなっている。死亡した11人のうち1/3は0才のうちに亡くなっている。一般に大人は感染してから発症するまで10〜15年と慢性の傾向だが、子どもは潜伏期が6ヶ月と短く病気の進行が早い。子どもが薬を飲むのを嫌がるので治療が難しく、自分からうつった事を告知することは親として辛く、子どもが一時的にうつ状態になったり態度が変わったりするなどの問題がある。
これから妊娠することを希望するHIV感染者に対して、性交を回避して妊娠することができる。女性が感染して男性が感染していない場合、精子を女性の子宮に入れる人工授精という方法がある。男性が感染して女性が感染していない場合は、卵子と精子を取り出し体外で受精させたのちに子宮内へ戻す体外受精という方法がある。精液にHIVウィルスが含まれているのでウィルスを除去して受精させる。
HIV感染よる母子感染は十分に予防することが可能である。妊娠前からHIVスクリーニング検査することが重要であるが、妊娠前からHIV抗体検査をすることが大切である。それ以前にHIV感染予防がもっと大切である。
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本報告書は神奈川県立高等学校 性・エイズ教育実践研究会様のご協力、ご承諾をいただき掲載しております。
尚、一部個人名や学校名などは省略させていただいております。 |
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